発信者情報開示請求の弁護士費用は相手に請求できるのか(法務省の資料によると)
発信者情報開示請求の手続費用、弁護士費用を相手に請求できるかという点については、以前にも記事を書いたことがあります。
その時の結論は、最高裁の判断はなく、裁判例の数も少なく、高裁レベルでも判断が分かれているため、最終的には裁判官による、というものでした。
法務省の資料によると
令和8年4月、法務省から「インターネット上の名誉権侵害等の損害賠償額等に関する調査報告書」が公表されました。そこで、開示費用の請求についてもどのような分析がされているかを確認してみました。
結論として、報告書を踏まえても、相談者にお伝えする内容は大きく変わりません。
報告書によると、最高裁の判断はなく、高裁の裁判例も少数にとどまっています。対象期間の2年間で「開示費用が損害となるか」の判断材料になるのは、28件程度と思われます。2年間で28件は、相当に少ない件数です。そして、高裁レベルでは結論が分かれているため、結局のところ、前回書いた記事のとおりの結論となります。
もう一つ気になるのは、報告書の元になっているデータが、少し古い印象を受ける点です。対象が、令和4・5年の判決なので、今から3、4年前のものが中心となります。判決までに1年程度、その前の開示請求でさらに半年程度かかっていると想定すると、投稿自体は令和2年から令和3年ころです。報告書も、令和4年10月1日施行のプロバイダ責任制限法改正後の発信者情報開示命令事件によって開示を受けた事案は含まれていない、と注意書きをしています。
最近の改正後の運用を直接反映している資料、とは言いにくいです。
その点を踏まえても、現状の結論は、前回の記事のとおりです。
参考となる傾向
報告書から1点、参考になる傾向が読み取れました。慰謝料の認容額が高い事案ほど開示費用の全額が認められやすく、慰謝料の認容額が低い事案ほど開示費用の全額は認められにくい、という傾向です。
慰謝料が5万円や10万円しか認められなかった事案で、開示費用60万円を全額認めると、加害行為に対する制裁としてバランスを欠くという感覚が働いているのだと思います(確かそれを明示している地裁の裁判例があったと思います)。そのバランス感覚が果たして適切なのかは議論の余地がありますが(被害者に発生した損害の賠償であり、制裁ではないような気がします)、限られたサンプル数の中でも、一定の傾向として表れていることは事実です。
訴訟の場面では慰謝料の額が、開示費用の認容割合についての攻撃防御の指標として機能し得る、ということになります。ただ、慰謝料の認容額自体が事案ごとに大きく振れるため、開示費用について事前に正確に予測することは難しいのが実情です。
結論
結局のところ、受任段階で「開示費用は相手から取り戻せますか」と聞かれた場合、最終的には裁判官によりますし、事前には分からない、という回答になる点は変わりません。そのことを理解していただいたうえで、リスクとして受容し開示請求に進むかどうかを判断していただくということも変わりません。















