「これは誹謗中傷になりますか?」に対する回答
「これは誹謗中傷になりますか?」
ネット上の投稿について、この質問は本当によくいただきます。
手続きを進めるかどうかを考えるうえで、いちばん気になるポイントですよね。
基準はあるけれど、答えは一つではありません
たとえば「侮辱」の場合、法律上の基準はあります。
社会通念上、許される限度を超える侮辱行為かどうか、という考え方です。
基準だけを見ると、はっきりしているように感じるかもしれません。
ただ、実務では裁判官によって判断が分かれることは珍しくありません。
基準がある=結論が一つ、とはならないところが、この分野の難しさです。
同じ事件なのに、判断が真逆になったことがあります
実際に、私が代理人として関わった事件で、
裁判官によって正反対の評価がされたケースがありました。
ある投稿について、
「名誉毀損」と「プライバシー権侵害」の両方に当たるとして、
令和4年改正の前後で、2つの開示請求手続きを行いました。
依頼者側の代理人は、どちらも私相手方の代理人も、どちらも同じ主張書面や証拠も同じ手続きを行った時期もほぼ同じ
違っていたのは、担当した裁判官だけでした。
出された判断は、こうでした
一人の裁判官は、
「プライバシー侵害にはなるけれど、名誉毀損とまでは言えないのではないか」
という判断をしました。
もう一人の裁判官は、
「名誉毀損にはなるけれど、プライバシー侵害とまでは言えないのではないか」
という判断をしました。
結果としては、どちらの事件でも開示は認められました。
ただ、権利ごとの評価を見ると、結論は真逆だった、ということになります。
相談者の前で、簡単には言えないこと
誹謗中傷で相談に来られる方は、
すでに投稿の内容によって深く傷ついています。
その方の目の前で、
「これは無理ですね」
と断言するのは、正直とても言いづらいです。
一方で、
「裁判官によって結論が変わるかもしれません」
という答えも、相談者にとっては納得しにくいものだと思います。
それでも、見通しは正直にお伝えします
弁護士として、受任する前に
結果の見通しやリスクを伝えることは欠かせません。
実際に、どうしても
「五分五分としか言えない」
という案件はあります。
その場合には、
なぜ判断が割れそうなのかどんなリスクがあるのか
を説明したうえで、
それでも進めるかどうかを検討してもらっています。
予想が外れることもあります
実務をしていると、
正直厳しいと思っていたけれど、開示が認められたかなり固いと思っていたのに、認められなかった一審では負けたけれど、控訴審で結果が覆った
ということも、実際にあります。
この分野は、はっきり白黒つけられないケースがとても多いです。
だから、メールで即答するのは難しいのです
「開示は認められますか?」
という質問を、メールでいただくこともよくあります。
ただ、
法的には問題がなさそうな案件でも、
手続き上・技術上のリスクが全くないケースはありません。
そういった点も含めて説明しようとすると、
どうしても文章だけでは伝えきれなくなってしまいます。
誹謗中傷の判断が難しいのは、
基準が曖昧だからではありません。
基準があっても、人が判断する以上、揺れが生じるからです。
だからこそ、この分野は
「一言で答えられる問題ではない」
と感じています。















